1/700 空母「隼鷹」解体作業ジオラマは無事完成となりました。 たくさんのアクセスありがとうございます。
今回は当作品の最後の製作日誌です。
全体写真だけでは伝わらない、作品に関する細かい部分をお話いたします。
まずこの画像をご覧ください。
本来あるべき位置に菊花紋章が有りませんね。
これは想像ですが、帝国海軍を象徴するシンボルである菊花紋章は戦争が終わった時点で外されたものと思います。
建造時はかなり早い段階で取り付けられるものなんですが。
しかし外した菊花紋章はどうしたのでしょう?
瓦礫と一緒に処理・・・なんてことはなかったと思いたいのですが。
ちなみに主錨もすでに撤去しています。
次にこの「JUNYO」のアルファベット文字。
これは我が師匠からのお話なのですが、戦後GHQによって描かされたものということです。おそらく直接ペイントしたのは日本人であろうと・・・。
もしそうならどんな気持ちで描いたのでしょうね?
実艦写真ではちょっとヘロヘロで殴り書きのように見えました。
これでは隼鷹が可哀想なので模型ではしっかりと丁寧に描かせて頂きました。
そしてこの実艦写真。
模型でもこのように表現しました。
ここは本来高角砲が有ったスポンソンです。終戦と同時に真っ先に武装が取り外されました。
ですので瓦礫の山の中に高角砲や機銃などの武装はありません。
解体が始まるずっと前にすでに取り外されていたからです。
ここは電動機室です。
日本空母のエレベーターはこの電動機で制御されます。
解体のために昇降台が取り外されるとこの電動機室が丸見えになります。
解体模型以外では通常模型では再現される部分ではありません。
なお、昇降台が下に降りた状態では兵員が落下する危険性があります。
そこで落下を防止するためにエレベーターの周囲に柵欄柱というポールを立ててロープを張ります。これは手作業で抜き差しして行うようです。
一方アメリカ空母はエレベーターが降りると連動して柵が飛行甲板の溝から電動でせり上がってくる構造になっているようです。
このあたりはアメリカ軍が一歩勝っていたようですね。
ちなみにアメリカ軍では「エレベーター」、イギリス海軍では「リフト」と」呼ぶのだそうです。
次に格納庫です。
隼鷹の場合は商船改造空母ですので格納庫の形状はとてもシンプルです。
でも凄いことに改造空母でありながら格納庫は二段式ということです。
それを表現したくて上段の一部の床を撤去して下段の存在をアピールしてみました。
余談ですが日本空母の格納庫はご覧のように完全に密閉空間となっています。
これは波風の進入防止や船体の強度には有効かもしれませんが一たび直撃弾が格納庫内で爆発すると爆風の逃げ場がなく最悪の場合、飛行甲板やエレベーターを吹き飛ばし致命傷となりかねません。
逆にアメリカ空母は舷側はシャッター式で必要に応じて開閉します。
庫内で爆弾が爆発しても爆風は開口部から逃げて直ちに消火作業にかかれます。
このダメージコントロールという点でも残念ながらアメリカに軍配が上がりそうです。
操艦で全て回避できれば問題ないのですが圧倒的な数の米軍攻撃機の波状攻撃はとても回避しきれるものではなかったでしょうね・・・。
最後に艦橋です。(0.3mmプラバンでスクラッチ製作しています)
今回の作品で最も悩んだのがこの艦橋の有無でした。
実はここまで飛行甲板をひっぺ返した段階まで解体が進んだ場合、すでに艦橋は撤去されて存在しなかったのではないだろうかという事です。
実際の解体写真を見ても恐らくはその可能性が高いのです。
しかし模型でそこまで忠実に再現するともうこれが隼鷹なのか何なのか分からなくなってしまうのです。
隼鷹の特徴はあの巨大な艦橋です。そこであえて事実に反するかもしれませんが私は艦橋を残すことに決めました。
そしてシンボルである大きな斜め煙突をクレーンで吊り下げるという演出を取りました。
なんとかこれで自分を納得させようと思っていたのですが・・・。
ある日、ある方からこのような資料を教えていただきました。
これは米海軍空母「コーラルシー」の解体作業風景です。
ご覧ください、飛行甲板をこれだけ取り払っても艦橋はしっかり残っています。
これで希望が出てきました。まんざら可能性がゼロでもないのかなと(笑)。
以上で細部の解説を終わります。
空母「隼鷹」解体作業ジオラマの製作日誌はこれで完結です。
最後まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました!